この記事は療育の作業療法士が解説します。
視覚・聴覚・触覚・前庭感覚・固有受容感覚をもちいる感覚統合あそび。
感覚統合遊びで大切な視点は、慎重?大胆?怖がってる?など、子どもの様子を観察することです。
観察で得意・不得意がわかれば、子どもに必要な感覚あそびができるようになりますよ。
- 感覚統合のしくみを解説
- 感覚あそびをするときの注意点
└観察ポイントも解説 - それぞれの感覚へのアプローチ方法
この記事を読んで、感覚統合あそびの取り入れ方を知り、子どもにピッタリな関わり方ができるようになりましょう!
感覚統合とは発達の土台のこと
感覚統合は子どもの発達を支える要素です。
ここでは感覚統合のしくみについてお話していきます。
感覚統合とは
感覚統合とはさまざな感覚を脳が整理するはたらきのこと。
わたしたちは常にたくさんの感覚刺激をうけとり、脳に「どんな刺激がはいったか」をつたえています。
その情報をうまく整理し、「この刺激のときはこんな反応をしてね」と指令するはたらきを感覚統合と呼びます。
感覚統合は5つの感覚をコントロールする
感覚統合では5つの感覚をコントロールしていきます。
- 視覚:みる
- 聴覚:きく
- 触覚:さわる・さわられる
- 固有受容(こゆうじゅよう)感覚:
ちから加減・体の各パーツのうごきを察知 - 前庭(ぜんてい)感覚:
バランスや姿勢の変化を知る・眼の運動
5つのなかでも、特にからだのコントロールに欠かせない感覚が3つあります。
触覚・前庭感覚・固有受容感覚には、ボディイメージをそだてる役割があります。
▼ボディイメージをくわしく知りたい人はこちらの記事もお読みください。
感覚統合がうまくいくと
感覚統合がうまくいっていると、とっさにおきた体の変化に対応できます。
足の小指をカベにぶつけたときを考えてみましょう。
痛みを感じた瞬間、その場にしゃがんだり「痛い」と声が出たりしますよね。
その行動ができるのは、痛み刺激(触覚)の感覚統合がうまくいっているからです。
感覚統合がうまくいかないと
感覚統合がうまくいかないと、過剰な反応をしたり、反対に刺激に気がつかない振る舞いをしたりします。
小指をぶつけたときの反応を見てみましょう。
多くの人にとってはたいしたことない痛みでも、痛がって泣きつづける子がいます。
反対に、パンパンに腫れていてもケロッとした顔で歩くような、痛みに鈍い子も。
この2つの共通点は、触覚の感覚統合がうまくいっていないということ。
ですので、感覚情報の整理を手伝うために、感覚統合遊びをとり入れる必要があるのです。
このあとは感覚統合遊びの方法と注意点についてお伝えしていきます。
▼感覚統合についてもっと学びたならこちらの本を読んでみてください。
感覚統合遊びの注意点
感覚遊びを取り入れるときは、無理じいをしないようにしましょう。
感覚遊び中にキャパオーバーしても、うまく伝えられない子がいます。
苦手な遊びをムリヤリさせるのはNGです。
また好きな感覚刺激だとしても、はげしく遊ぶのは注意が必要です。
リラックスして遊ぶためには、以下の点に気をつけましょう。
- 笑顔がみられるか
⇒泣きそうなら遊びを中止する - 緊張していないか
⇒苦手な感覚刺激かもしれない - 興奮しすぎていないか
⇒キャパオーバーしているかも
感覚統合がうまくいっていない子は、苦手でも楽しすぎても興奮しすぎることがあります。
こまめに表情や態度を観察し、たのしく遊べているかを確認するクセをつけるのがオススメです。
視覚へのアプローチ方法
視覚のはたらきと、視覚刺激に敏感な子への関わり方をお伝えします。
視覚とは
視覚には「モノを見る」はたらきがあります。
視覚の統合がうまくいかないと、視覚過敏がみられやすいです。
視覚過敏の子への工夫
視覚刺激に敏感だと、色・光・文字など目にうつる多くのものに苦痛や不快を感じます。
視覚過敏がでやすいもの
- 太陽の光や白い蛍光灯の下
- 蛍光灯のチカチカ
- 車のヘッドライト
- カメラのフラッシュライト
など
気にならない人が多い明るさでも、視覚過敏があるとまぶしく感じたり、目が痛くなったりします。
- サングラスや調光メガネをかける
- 部屋に置くものを少なくする
- 遮光カーテンをつける
- 落ちついた色のインテリアにする
- 部屋の照明を暗くする
など
原色などの派手な色や散らかった場所は、視覚の情報量が多くなります。
明るさや色のコントラストを弱めてみましょう
聴覚へのアプローチ方法
聴覚のはたらきと、聴覚に敏感さがある子への関わり方をお伝えします。
聴覚とは
聴覚にはモノや声の「音を聞く」はたらきがあります。
聴覚の統合がうまくいかないと、聴覚過敏がみられやすくなります。
聴覚過敏の子への工夫
聴覚過敏がでやすいもの
- 赤ちゃんや子どもの泣き声
- テレビやスマホの緊急速報
- 工事現場
- 掃除機の音
など
いつもは平気な音でも、突然聞こえるとパニックになることがあります。
- 音が出ることを前もって知らせる
- 耳をふさいでその場からはなれる
- 耳栓をつける
- ノイズキャンセリングイヤホンをつける
など
音を完全にシャットダウンするのはむずかしいので、その場からはなれるのが一番です。
ノイズキャンセリングイヤホンを検討されるときは、療育機関に相談してアドバイスを受けましょう。
▼理学療法士がいるへやすぽアシストなら、子どもひとりひとりに合ったアドバイスがもらえます。
触覚へのアプローチ方法
触覚のはたらきと遊び方についてお伝えします。
触覚とは
触覚には「さわる・さわられたときに感じる」はたらきがあります。
- 肌のふれあいで情緒が安定する
- 痛いもの・危険なものから身を守る
- 手ざわりのちがいがわかる
- 体の大きさやりんかく(ボディイメージ)を認識する
⇒人にぶつからず歩ける
ちょっとの汚れや新しい手ざわりなどの触覚刺激にパニックになっている子は、「触覚防衛反応」がはたらいているかもしれません。
▼こちらの記事に触覚防衛反応のしくみと改善方法をまとめています。
触覚あそび
触覚刺激をとりいれた遊びをご紹介します。
- 粘土・スライム
- ボールプール
- トンネルくぐり
- 箱の中身はなにかな?
- (目かくしボックスに入っているものを触って当てる)
- 体にはったシールをはがす
- シェービングムース(泡)をさわる
- 絵の具で手形・足型とり
- くすぐりあそび
- 砂場
- 水あそび・プール
- ハダシで歩く
- 葉っぱや木の実をさわる
- 泥団子つくり
触覚あそびが好きなら満足するまで遊ばせるとよいです。
苦手な子であれば汚れにくい工夫をしましょう。
たとえばスライムなら、道具(スプーンなど)をつかう、ビニール袋に入れてさわるなど。
これこそスモールステップの関わり方!
▼お家であそべる感覚あそびおもちゃを写真つきで紹介しています。
固有受容感覚へのアプローチ方法
固有受容(こゆうじゅよう)感覚のはたらきと遊び方についてお伝えします。
固有受容感覚とは
筋肉や関節のうごきに関わる固有受容感覚。
「からだの位置・傾き・ちから加減を感じる」はたらきがあります。
- 抱きしめられて情緒が安定する
- ちから加減の調節
- 手足を思い通りにうごかす
└ひとの動きをマネしておなじように動くなど - 姿勢を保つ
- バランスをとる
- ボディイメージを発達させる
ボディイメージの発達として、触覚とともに体の大きさ・輪郭を把握するはたらきがあります。
固有受容感覚あそび
固有受容感覚の刺激をとりいれた遊びをご紹介します。
- 重めのモノを運ぶ
- ぞうきんがけ競争
- おしくらまんじゅう
- 手足をぶるぶる振る
- 手押し車ですすむ
- トランポリンをとぶ
- しがみつくあそび
- 布団の中から脱出する
- ジャングルジムをのぼる
- 木のぼり
- つなひき
- 鉄棒にぶらさがる
よじ登る・しがみつく・振動などは固有受容感覚がたくさんはいります。
お片付けのときなどに、すこし重たいものを運んでもらうのもおすすめです。
体にグッと力がはいる遊びは、体幹もつよくなります
▼固有受容感覚をそだてる運動おもちゃを紹介しています。
前庭感覚へのアプローチ方法
前庭(ぜんてい)感覚のはたらきと遊び方についてお伝えします。
前庭感覚とは
耳の奥(耳石器・三半規管)で感じる前庭感覚。
からだの傾き(バランス)・回転・スピードの変化を感じるはたらきがあります。
- 覚醒のコントロール
└テンションを安定させる - 姿勢を保つ
- バランスをとる
- 眼のうごきをコントロール
- ボディイメージの発達
つまずいて「こけそう!」と気がつくのは、前庭感覚のはたらきによるもの。
またくるくる回ると目がまわるのは、前庭感覚が目を動かす筋肉とも関連しているからです。
ボディイメージの発達では、空間に対して体のどの部位をどの方向にうごかすかを把握するはたらきがあります。
(こけないように体をもとの姿勢に戻そうとするなど)
前庭感覚あそび
前庭感覚の刺激をとりいれた遊びをご紹介します。
- トランポリンをとぶ
- バランスボールに座る・寝転ぶ
- バランスストーンをあるく
- 平均台をあるく
- 抱っこしてクルクル回る
- 片足たち競争
- くるくる回るイスにすわる
- すべり台をすべる
- シーソーにのる
- ブランコにのる
ゆれる・まわる・バランスをとるあそびをしましょう
注意してほしいのが、前庭感覚の刺激をとても怖がる(重力不安)お子さんの場合。
重力不安があると、グラグラする足元や、ブランコなど姿勢が変化するうごき苦手になります。
安心してあそべる環境を設定して、子どもから遊びだすのを待つようにしてください。
(両足がつく低いブランコ、ひくい段差、グラグラしない足場など)
まとめ
感覚統合遊びをとりいれて、子どもの体の使い方をのばしていきましょう!
感覚遊びをするときは「無理じいしない」よう気をつけましょう。
緊張していないか、笑顔か、集中できているかを観察してくださいね。
たのしみながら成長できるのが感覚遊びの特徴!
なお部屋の中であそぶときは、足音の騒音対策やケガの予防もしっかりしておきたいもの。
厚みのあるプレイマットを敷くなど、しっかり対策をしてくださいね!
子どもの足音が気にならなくなったマットについては、こちらの記事でくわしくまとめています。
▼感覚統合あそびを学びたい人にピッタリな本はこちら。
療育に関わる人、子どもの発達が気になるご家族。どちらにも読みやすいです。
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