どうしようもない不快感「触覚防衛反応」適切な遊びで症状を軽減しよう

この記事は療育の作業療法士が解説します。

このような子どもの行動をみたことはありませんか?

  • 服を着せてもすぐに脱ぐ
  • 自分からは抱きついてくるのに、こっちから触るとものすごく怒る
  • 歯磨きイヤ、散髪イヤ、手つなぎもイヤ、体になにか触れるの全部イヤ!
  • 急に触られるとパニックになる

この行動は、触覚防衛反応がはたらいているからかもしれません。

触覚防衛反応とは、触られた刺激から必死でからだを守ろうとする反応です。

フミカ

触覚過敏のひとつです

この反応を落ち着かせるために、スモールステップを意識した触覚あそびをしましょう。

敏感さが軽減していくので、急に触られても落ち着いていられるようになりますよ。

この記事でわかること
  • 触覚過敏の原因
  • 触覚のはたらき
  • 触覚防衛反応がでる理由
  • 触覚防衛反応をおさえる方法
    └スモールステップのとり入れ方
    └おすすめの触覚あそび

この記事を読んで、触覚刺激にパニックをおこす子どもの理解者になりましょう!

この記事を書いた人

フミカ

  • こども専門の作業療法士
    手先や運動面の不器用さをサポート
  • 通園施設・幼稚園・小学校でアドバイザー経験あり
  • ただいま全力で姉妹を子育て中
    毎日、知育おもちゃで遊んでいます
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目次

触覚過敏の原因は解明されていない

実は触覚過敏がおこる原因はまだ分かっていませんが、以下の部分にエラーがあると考えられています。

  • 感覚刺激のつたわり方
  • うけとった感覚刺激の整理

このようなエラーを「感覚統合のかたより」と言います。

脳に伝わった感覚刺激がうまく整理できないために、過剰に反応してしまったり反対に気がつかなかったりしてしまうのです。

感覚統合の説明と感覚のかたよりへのアプローチ方法は、今日からできる楽しい感覚統合遊び|子どもの行動からみる関わり方や工夫にまとめています。

触覚ってなに?触覚のはたらき4つ

触覚を感じとるセンサーの説明と、4つある触覚のはたらきについて説明します。

触覚センサーは皮膚にある

「なんか触られた!」という触覚刺激に反応するセンサーは「皮膚」にあります。

※受容器(センサー)=刺激をキャッチする場所
 例:視覚の受容器は目

フミカ

からだの表面ぜんぶに触覚センサーがあります

体の表面をまもる触覚のはたらき4つ

ケガのリスクから体が守られているのは、皮膚がキャッチする触覚情報のおかげです。

その触覚には4つのはたらきがあります。

  • 単純な触覚
    さわる・さわられるのを感じるはたらき
    識別系触覚と原始系触覚にわかれる
  • 圧覚
    ギュッとにぎられるような圧迫感に気がつく
  • 温度感覚
    モノの熱さや冷たさを感じる
  • 痛覚
    痛みを感じる

わたしたちが安全に生活できているのは、皮膚からの触覚情報をきちんと整理できているからです。

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触覚の原始系が優位だと防衛反応がでる

単純な触覚のタイプは「識別系」と「原始(本能)系」2つのはたらきがあります。

ここでは原始系と識別系のちがいの解説と、触覚防衛反応の例をお伝えします。

触覚の原始系と識別系のちがい

識別系と原始(本能)系について表にまとめました。

識別系触るだけで形・手触り・大きさなどのちがいが分かる
例えば…
見ずにさわるだけで小銭の種類が当てられる
原始系
(本能系)
触ったり触られていないのに『なんかイヤだと感じる』
例えば…
目をとじていても人が近づいた気配がわかる

「原始系」がはたらきすぎると、ちょっとした触覚刺激にも敏感に反応してしまいます。

これが「触覚防衛反応」がおこる原因です。

触覚防衛反応は「原始系」>「識別系」の状態
触覚のバランスが崩れている

触覚防衛反応の例:本能的・反射的に反応する

触覚防衛反応の正体は、原始系ががんばりすぎることです。

原始系がはたらきすぎると、ちょっとの刺激にも「ヤバイ!身を守らないと!」と反応してしまいます。

【触覚防衛反応の例】

  • 人が近くを通るだけでビックリする
  • 毎回おなじような手触りのものをイヤがる
  • タグのチクチクがイヤで服を脱ぎすてる
  • 急に体に触られると、ビックリして声を出したり手を払いのけたりする
フミカ

日常生活での困りごとがいっぱいです

触覚防衛反応をおさえよう

触覚防衛反応をおさえる方法、介入時のコツ、おすすめの遊びについてお伝えします。

触覚防衛反応をおさえる方法

触覚防衛反応をへらすには、識別系をつかう経験をふやす必要があります。

人は、さわったり触られたりする経験を通して、頭の中で触覚情報の整理ができるようになります。

「識別系<原始系」のバランスを識別系>原始系

フミカ

あそびを活用してバランスを変えちゃいましょう♪

遊びをとおして識別系をそだてよう

識別系がそだつ遊びのポイント

識別系をそだてる遊びをするときは、以下4つのポイントを意識しましょう。

識別系をそだてるポイント
  • いろいろな感触のものをさわる
  • 触る・触られている刺激へ意識をむける
  • 苦手な感触はムリに触らないでよい
  • 安心して遊べるよう「スモールステップ」を意識する

さわられるが苦手な子でも、意外と自分からさわるのは平気なことも。

スモールステップを意識して識別系を育てていきましょう。

スモールステップの取り入れかた

苦手な感覚あそびをするときはスモールステップでとり組むとよいです。

スモールステップとは、ゴール(目標)までの道をこまかく段階分けし、小さな目標をひとつずつクリアする方法です。

スライム遊びがきらいな子へのスモールステップ例

ステップ① 道具を介して触る
スプーンやお玉ですくってあそぶ

ステップ② 手が汚れない状態でさわる
スライムをビニール袋に入れる

ステップ③ 無意識のうちにふれる
スライムを自分で作るときに、いつの間にか手についている状態

ステップ④ 意識して手で直接さわる
手につきにくい固さのスライムを選ぶ
なれたらやわらかいスライムもさわる

フミカ

苦手なものと子どもの間にワンクッションはさむ感じ

識別系をそだてよう!すぐに実践できる遊び例

いろいろな感触・かたち・素材のものにふれる経験をふやし、識別系をそだてていきましょう!

あそび①粘土

ちぎる、丸める、のばす、かたちを作ってあそびます。

べたつきが苦手な子には、ボーネルンドのかんてんネンドがおすすめ。
ねんど特有のアブラっぽさが少ないので、手や机につきにくいです。

あそび②スライムを作ろう

スライムを作りましょう。じぶんで作れば自由に固さを調節できます。

①水 ②ホウ砂 ③洗濯のり(PVA) ④絵の具食紅を混ぜて完成♪

やわらかくしたいときは水を多めに。
手につきにくい固さにしたいときは洗濯のりを少なめにしてみてください。

あそび③シェービングクリーム

かんたんにフワフワもこもの泡が出るシェービングクリーム
髭そりだけではなく、触覚あそびにも使えるんです。

  • 洗面器にいれて泡あそび
  • 窓ガラスにつけて泡でおえかき
  • 泡で手形アート
  • 絵の具やスライムとまぜて色あそび

弾力があってへたりにくい泡なので、とても遊びやすいですよ。

あそび④シールはどこだ

子どもの肌にシールをペタペタ貼り、見つけてもらいます。

ポイントは、背中や足のうらなど、パッと見ではみつからないところに貼ること。

カンタンにはがせるよう丸いシールであそんでくださいね。

あそび⑤ボールプールでかくれんぼ

ボールプールはボディイメージをそだてるのイチオシの触覚あそびです。

全身にものがふれる感覚に慣れますし、自分では見えない背中やお尻などを意識するきっかけにもなります。

ただボールプールに入るだけでなく、「かくれる・見つける」を意識してあそびましょう。

  • ボールプールにもぐって自分の体をかくす
  • かくしておいたぬいぐるみを探してもらう など

あそび⑥なかみはなーんだ

中が見えない袋や箱にはいっているパズルや人形などを当ててもらう遊びです。

識別系を育てる王道の遊びでもあります。

見えないものを触るのはドキドキするので、あらかじめどのようなものが入っているかを伝えておくようにしましょう。

あそび⑦絵の具をペタペタ

指や手のひらに絵の具をつけてお絵かきをしてみましょう!

いらないTシャツにぬってもよいですし、なれたら体にぬってみても。

絵の具の冷たさや固さの変化を感じる経験がつめます。

あそび⑧背中の文字当て

背中に書いた文字を当ててもらいます。

○△□からはじめ、正解したらひらがなやカタカナもかいてみてください。

背中は敏感さが出やすい部位なので、最初は子どもに書く役をしてもらいましょう。

くすぐったがり上手く書けない子には、何回背中をタッチしたか数えてもらう遊びもおすすめです。

あそび⑨ザラザラぱらぱら

小豆、まくらビーズの中身、砂など。
いろいろな素材をさわってあそんでほしいです。

小豆やお米は手につきにくいので、子どもの抵抗感もすくないですよ。

さわるのに慣れたら、素材の中にかくれているぬいぐるみを見つける「宝さがし」もしてみてくださいね。

まとめ:触覚防衛反応は軽くできる

触覚防衛反応とは、外からの触覚刺激に敏感に反応して体を守ろうとすること。

触覚の識別系と原始系のうち、識別系をつかう経験をふやすことが対策のカギです。

識別系をそだてるポイント
  • いろいろな感触のものをさわる
  • 触る・触られている刺激へ意識をむける
  • 苦手な感触はムリに触らないでよい
  • 安心して遊べるよう「スモールステップ」を意識する

さわられることの不安感をへらし、子どもが落ち着いて過ごせる支援をしていきましょう。

触覚防衛反応を知るには感覚統合を学ぶのがおすすめです。
感覚統合の説明や具体的な遊びがのっている本を紹介していますので、参考にしてください。

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療育経験のある作業療法士&2児のママ目線で、育児の悩みを解決する記事を執筆しています。

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